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[2021/09/07] 成功本は読むな。 /

令和3/皇紀2681年8月1日 友引 | 2021/09/08 21:48 更新
十年以上前になるが、母校でもある千葉大学の普遍教育科目(一般教養科目に相当)の「起業論入門」という講義の講師の一人を務めていた時、「成功本は読むな。」と学生に語ったことがある。
この講義は千葉大学が掲げる産学協働の一つであり、自分で起業した卒業生を集めて、半期セメスター15回シリーズで数年間設定されていた講義だった。

講義後、一人の学生が私のところにやってきて議論を仕掛けてきた。
「先生は『成功本を読むな。』と言ったけど、私は賛同できない」

元々私は読書はあまり得意な方ではなく、生まれてこの方、お恥ずかしながら、読破した書籍はかなり少ない。
大学4年生の時にITベンチャーを起業したわけだが、経営学を学んだこともないし、経営本など全く読んだこともない。読んだとすれば、起業する際、法人の登記の仕方を調べるために、合資会社の設立本を読んだくらいだ。これはあくまでもマニュアルのようなものだ。

某学生とはいろいろと語り合ったが、完全にわかりあえたかはわからない。

私がなぜ「成功本は読むな。」と語ったのか。
それは本が嫌い、読書が苦手だから、ということではない。
それを正当化したわけでもない。
この考え方はいまでも変わっていない。

理由は単純だ。
成功本に書かれていることは、書かれた瞬間にすでに過去のことであり、それを真似たとしても成功する保証などないのだ。もし、成功本を読んで成功するなら、世の人は全て成功してしまうことになる。しかし、実際にはそうはいかない。むしろ成功しない方が圧倒的に多いだろう。
そもそも、成功には理屈はないと思う。
成功者と呼ばれる人たちの多くが明確なプランニングをもって、それを遂行し、明確な理由を以て成功しているか、と言えば、ほとんどのケースでは「否」だろう。
成功にはさまざまな要素が作用している。極めて雑な言い方をすれば「運が良かった」のである。タイミングが良かったのだ。
だから、成功本の多くは後付けの理由であることが多い。振り返ってみれば、あのことが良かったのかもしれない、ということをまとめただけの話しだ。

講義ではさらに続けた。
「成功本を読むなら、自分のモチベーションを上げるくらいの目的に留めた方が良い。間違っても具体的な手法を真似しようなんて思っちゃいけない」
「むしろ失敗本を読め。失敗には明確な原因がある。それを学ぶことは大切だ」

私は2005年まで株式会社かっぺの代表取締役社長を務め、会社経営の先頭に立っていたが、その後、社長を譲り、故郷・鴨川に戻ってきた。
その後、株式会社かっぺの前身でもある合資会社いなかっぺの代表は務めてはいるものの、本格的な会社経営からはもう15年以上遠ざかっている。
むしろ、2008年に立ち上げた「かもナビ」を端緒に、地域メディアから、まちづくりに携わっている。

経営とまちづくりはまた違うかもしれないが、「成功本を読むな。」という点では一緒かもしれない。

言い換えるなら、「まちづくりにおいてコンサルタントなど必要ない。」「まちづくりは失敗してもいいから地元の人たちにより行われるべき。」ということだろう。
コンサルタントが言っていることは一見まともで、成功への道に聞こえるかもしれないが、成功本と同じく、その手法はすでに過去のものである。それにコンサルタントはまちづくりの成否まで絶対に責任をもたない。契約が終われば、渡り鳥のようにどこかへ行ってしまう。その後を処理しなければならないのは、結局地元の人たちだ。

未来の成功の理由は、いま、この時点において明確には存在しない。
そんなのを理由立てて語る人がいるなら、それは過去のノウハウであり、過去の栄光に過ぎない。それを真似したところで、絶対に成功などありえない。

だれも思いの寄らない、むしろ、そんなの無理だ、そんなのバカだ、と言われるようなやり方をした方が成功の可能性は高いだろう。
既存の概念や常識からは成功など生み出されないからだ。

まちづくりに携わる地域の人たちに強く言いたい。
外にとんでもないノウハウがあるなんて、幻想に過ぎない。
むしろ、我々の内に実はヒントがあり、答えがある。
現場の感覚を信じ続けてほしい。
我々はこの地域から逃げられないのだから。


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な・に・ぬ(na.ni.nu)について
いつも私の拙い日記にお付き合い、ありがとうございます。
おかげさまでこの日記(na.ni.nu)は [2001/10/10] パカッ! の記事以来、16年目を迎え、[2004/04/23] Wataruさんを囲む会 以降は毎日欠かさず記録してきました。(時々、かなりの連続投稿はありますが・笑)
その間、私の人生にもさまざまなことがありました。自分にとって、この日記は第一に自分自身が自分の歩みを忘れないようにするための記録であり、そのために各日記には一年前の同日の記事が表示されるようにもなっております。
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