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[2021/09/06] マイナースポーツ考 /

令和3/皇紀2681年7月30日 赤口 | 2021/09/08 08:08 更新
夜練習。ゴール裏に照明を置いてみた。良い雰囲気♪
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東京オリパラも閉幕し、我々ビーチサッカー界においては史上初の決勝進出を果たし、準優勝に輝いたワールドカップも行われた夏。
しかしながら、地上波で放送されなかったこともあり、準優勝という実はとんでもない成果を収めた割りには世の中的にまだまだビーチサッカーへの注目度は期待通りではないという感覚がある。

今年は女子サッカーにおいては、プロリーグ「Yogibo WEリーグ」がこの後開幕する。本来であれば、東京五輪でメダルを獲り、世の中が盛り上がったところでプロリーグを開幕させ、そして、2023年の女子W杯誘致を実現するというシナリオがあったはずだが、W杯誘致からは早々に撤退し、五輪ではベスト8止まりという残念な結果に。FIFA女子ランキングもトップ10を逃し、13位に低迷している。女子ランキングにおける10位台というのは、男子ランキングでは40〜50位以降の立ち位置に相当すると考えて良いだろう。
確かに初年度のWEリーグはイニシャル費用を投入して集客など、一定の成果は収められるかもしれないが、このままでは2年目以降は全く不透明であると言わざるを得ない。

ビーチサッカーしかり、女子サッカーしかり、あるいは他のマイナースポーツしかり。
日本で完全にプロスポーツが成り立っているカテゴリーは一握りであり、オリンピックがアマチュアの大会であるように、多くのスポーツは別に仕事をもちながら取り組むアマチュアスポーツや実業団スポーツがほとんどである。
思いつく限り、完全プロスポーツをあげてみると、、、プロ野球、サッカー(Jリーグ *ただし、上位ディビジョン)、バスケットボール(Bリーグ)、プロゴルフ……と私は残念ながら、なかなか列挙することが難しい。

マイナースポーツに取り組む人たちが良く言うことばに「将来、プロ化を目指したい」というものがある。目標としては、確かに明確だし、夢もある。しかし、現実的にはアスリート活動だけで飯を食うというのは並大抵のことではない。1選手だけならまだしも、プロリーグといった同じカテゴリーのスポーツをプレーする多くの選手が完全プロでスポーツを継続していく環境の実現はたいへんなことだ。

私もかつて、オルカ鴨川FCのフロントスタッフの一員として、女子サッカーをどのように盛り上げていくのか、プロ化なども視野に入れながら関わっていた時期があった。
女子サッカーの場合、Jリーグの方向ばかりに倣うきらいがある。だが、関われば関わるほど、Jリーグと同じやり方ではうまくいかないことに気づかされた。女子には女子のやり方がある。
そもそも同じ競技で見れば、女子の方がプレーのスピードは遅いし、ドライな見方をすれば「つまらないサッカー」に思えてしまう人も多いだろう。だが、これは一軸的な見方であり、サッカーの競技性の部分だけで勝負してもフィジカルとスピードに勝る男子には到底かなわない。むしろ、女子には女子の勝負どころ、男子が勝てないポイントがあるはずなのだ。

だから、多くのマイナースポーツがプロ化を目標にし、すでに成功しているメジャーなプロリーグ、プロスポーツを追いかけることには私はあまり賛同できない。
各スポーツの特性や、既存のプロの形態ではない、もっと他のあり方、社会的な立ち位置などがあると思うからだ。むしろ、ニッチなところで攻めるべきだと思う。

前置きが長くなってしまったが、マイナースポーツを盛り上げていく上で、ポイントになりそうなことを述べてみようと思う。


【地方こそ、マイナースポーツが成り立つ】

女子サッカーに関わっていた頃、思ったことだが、マイナースポーツは地方こそ成り立つと思う。

確かに人口の多い都市部はマーケットとしては有利だ。
だが、都市部にはすでにさまざまなエンターテイメントが存在している。
スポーツにおいても、プロ野球、Jリーグ、Bリーグといったコンテンツが存在している。
そこにマイナースポーツの拠点を持っていったところで、例えば、同じ日に試合が重なれば、多くの市民の関心はメジャーなスポーツに向いてしまうだろう。
マイナースポーツは一部のファンを除いては、埋もれてしまうと思う。

一方で、地方は人口は少ないが、しかし、エンターテイメント、コンテンツもほとんどない。
例えば、オルカ鴨川FCが拠点にしている鴨川市を含めた南房総地域においては、オルカができるまでは、これまで他のスポーツ種目も含めて、全国的なリーグで戦うトップレベルの地域のスポーツチームは存在しなかった。
つまり、地域として地域に応援するチームはなかったのだ。
域内人口は20万人ほどではあるが、逆に言えば、そこにオンリーワンの地域チームが定着すれば、そのほとんどが応援してくれる可能性があるわけで、となれば、20万人のファンを獲得できるのであれば、それはそれで大きなベースとなるのである。

だから、私はその頃から「女子サッカーは地方ほど成り立つ」と主張してきた。
いまでもその考え方は変わっていない。


【ネット対応がカギ】

男子のサッカーW杯、アジア最終予選のアウェイゲームをついにテレビ局が放送せず、ネット配信のDAZNが独占配信を始めるように、また、Jリーグでも同様のことが起こってきているように、スポーツ中継はテレビからネットへと移ってきている。

東京五輪でも新しい種目として採用された、スケボーやスポーツクライミング(ボルダリング)、サーフィンといった、いわゆるニュータイプな、アーバンなスポーツはこれまでテレビではほとんど中継されておらず、ネット配信を中心に全世界に熱狂的なファンを集めてきた。

以前、とある方の講演で伺ったのだが、世界的なアーバンスポーツの大会「FISE WORLD SERIES」が日本に上陸した時(現在、広島市で毎年開催されている)、日本の関係者がテレビの放映権について相談したところ、「テレビ!?何を言っているんだ!?そんなのは必要ない。ネット配信でやるんだから」と一蹴されたというエピソードを語っていた。

パリ五輪ではブレイクダンスが採用されるというし、五輪種目に次々と新しいタイプの種目が採用されている背景には、陸上競技のようなコテコテのクラシカルスポーツから、ネット配信を中心とした新しい、ある意味濃密なファンがいるアーバンスポーツ、ニュースポーツにIOCもシフトしてきているというところがある。
それこそ、スポーツにも多様性が求められてきているということだ。

テレビではなく、ネット配信で行けるのであれば、マイナースポーツにも十分チャンスはある。
我々が取り組んでいるビーチサッカーも、DJ+BGM、さらにサッカーカテゴリーの中ではアクロバティックプレーも多く、得点も入りやすい。
試合時間も短く、気軽に観戦するにはもってこいのスポーツである。
まずはビーチサッカーも、発信する一つの武器として、ネット配信を積極的に考えたいところだ。

あわせて、SNSも活用したい。
情報発信におけるリスクもあるが、逆に、選手とファンとの距離の近さもマイナースポーツのアドバンテージでもあるから、それをSNSなどのネットツールを用いて発揮していきたいところでもある。

旧来の手法にとらわれない、プロモーション、情報発信の仕方がカギとなる。


【スポーツのプロではなく、スポーツライフのプロを】

完全プロ化を果たしているスポーツ種目において、選手たちにとって全てがハッピーか、と言えばそうではない。確かに、現役時代は競技レベルの良し悪しやケガなどの問題はあるものの、スポーツ活動そのものはクラブやスポンサーからサポートされ、スポーツに打ち込むことができる。
問題は“現役引退後”である。

近年、セカンドキャリア、デュアルキャリア、ということばがしばしば聞かれるように、スポーツ選手はスポーツしかしてこなかった故に、“現役引退”した後に苦労する選手が多い。

考えてみれば、長い人生の中でトップアスリートでいられる時間は限られており、その他の時間は一社会人として過ごしていかなければならない。
したがって、アスリート活動ばかりに傾倒して、社会性や仕事のノウハウなどを手にしないまま、アスリートから卒業してしまっては、なかなか一般社会に参加していくことは難しい。

私が闇雲なプロ化にネガティブな姿勢なのは、この点が大きな理由の一つである。

それに、自分もクラブチームを運営していて思うが、ファンの絶対数が限られるスポーツ種目において、スポーツの興行的な収入だけでチーム活動、アスリート活動を維持することは不可能であり、結局はスポンサーに頼ることになる。
そのスポンサーも、メジャーなプロスポーツと比べれば、広告効果を以て支援する理由は成り立たない。どちらかというと、がんばるスポーツ選手を応援するとか、その種目に思い入れがあるとか、いわゆるCSR、社会貢献活動の一環として多くのケースでスポンサーとして協力することになる。
しかし、その企業の業績が悪化すれば、真っ先に切られるのはスポンサー費であろう。
スポンサーに頼る形態は無理があるし、到底持続可能な仕組みとは言えない。

すなわち、マイナースポーツにおいては、スポンサーだけでなく、バランスの良い収入源が必要であり、クラブ、さらには選手自らが稼ぐ仕組みというのが必要なのである。

一つのヒントとして、スポーツはいままちづくりの一要素として活用されるようになってきている。
鴨川市でも創設された地域スポーツコミッションもその一つだ。
人々の健康増進、健康寿命を長くするために、スポーツは社会的に単なる競技から、健康福祉のツールになりつつある。

つまり、アスリートは、スポーツを日常化する、そんな仕事をするにはもってこいな存在なわけで、そういうキャリアを積みながら、アスリート活動を続けていく。スポーツに関わる仕事で生計を立て、地域や社会にも貢献し、自らもアスリートとして高みを目指す。
トップアスリート引退後も引き続きスポーツに関連する仕事に携わっていく。
いわゆる「スポーツライフのプロ」になるのである。

そんな生き方、仕組みができれば、マイナースポーツも十分に成り立つはずだ。
地域と密接にリンクすることで、その地域が当該のマイナースポーツのメッカになるかもしれない。


目下、私はビーチサッカーに取り組んでいるが、スポーツだけをやりたくてビーチサッカーに取り組んでいるのではない。
ビーチサッカーのもつ、エンターテイメントとの親和性、観光・商業との連携、ビーチスポーツの特長である老若男女、幅広い人たちが参加できるハードルの低さ、安全性、健康福祉に活用できる可能性、さらに、比較的低コストで実現できるビーチスポーツ施設の整備という特徴を活用し、鴨川市、南房総の一つの地域スポーツとして、経済的な地域活性化も含めた存在意義を高め、まちづくりにつなげていきたいと思っている。

逆説的に言えば、地域活性化、地方創生のカギがマイナースポーツにあるのだ。


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いつも私の拙い日記にお付き合い、ありがとうございます。
おかげさまでこの日記(na.ni.nu)は [2001/10/10] パカッ! の記事以来、16年目を迎え、[2004/04/23] Wataruさんを囲む会 以降は毎日欠かさず記録してきました。(時々、かなりの連続投稿はありますが・笑)
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